土
20
2月
2010
『文学おたく』
私は文学おたくである。それに気づいたのは数年前、お
ばさまたちが芸能人の話題で盛り上がるのを聞き流しなが
ら、「なんで、そんなことに興味があるかなあ。...?まて
よ? だが、私も高橋源一郎が何回結婚したとか、川上弘
美がすごく背が高いとか、そーいうことに興味があるでは
ないか? 知ったら人に言いたいではないか。これは...お
たくだ!」以来、テレビの芸能ニュースに見入る人たちを
馬鹿にしないことを心に決めた。好きなものにかける情熱
においては、みな、等しい。
文学おたくは孤独である。だが、私には一人だけ、同好
の士がいる。二回り以上年上のT氏である。「老人は都会
に住まなければ」ということで、定年後は東京に居を移し
てしまったので、会える機会は少ないけれど。
知り合ったのは、もう20年も昔、「え? 日野啓三?」
「一番好きです。古井由吉も好き」「その若さで...」と
いうところから始まり、私はT氏から埴谷雄高の『死霊』
を教わり、私はT氏に松浦寿輝の『もののたはむれ』を教
え...、東京と名古屋に離れてからは主に葉書でお勧め本交
歓をしている。
「ギュンター・グラスの『玉ねぎの皮をむきながら』、す
ごくよかったです。必読」
「相変わらず、硬派な本を読んでいるようで何よりです。
僕は、昔の本を読み直しています。カポーティの短編集
『カメレオンのための音楽』が面白かった。野坂昭如さん
の訳もすごくいいです」
確かに。特に「うつくしいこども」という、マリリン・
モンローのスケッチ(カポーティはゲイで、マリリンとは
親しい友人だった)が絶品。文学おたくとしては、カポー
ティと三島由紀夫の心の交流があったというところも、押
さえてみたい。
このサイト向けのお勧め本は、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』。
私はこれを読んで、日本家屋を見る目が変わりました。
未読の方は是非。
過日、友人へのプレゼントとして購入しようと本屋で在
庫を検索してもらったところ、「ありました。いんえいれ
いさん、ですね」と若い書店員が言い、隣にいたベテラン
に「いんえいらいさん」とチェックを入れられていた。後
で「それくらい知っていろ」と怒られたに違いない。
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