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3月

2010

『一生勉強』

 私は勉強が嫌いだった。本を読むことと、数学の問題を
解くことだけは飽きることなくやっていたが、暗記教科が
すさまじく苦手だった。というか、覚えるという作業が大
嫌いだった。英単語については受験に必要だったのでしぶ
しぶ覚えたが、大学に入って、英文和訳の授業であてられ
てとき、すらすらと訳してみせて、教授から、「素晴らし
い訳でした。ストーリーが全く変わっていますが」と褒め
られたほど、覚えることが嫌いだった。

勉強に目覚めたのは、社会に出てからである。マーケテ
ィングのために世代論を読み、Aという事象がBという現
象に現れるのを面白く感じた。すべての事柄は互いに作用
しあっているのだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」とはよく
言ったもので、法律が変われば、商業のあり方も変わり、
人々の暮らしが変わり、子どもが変わり、社会が変わる。
以来、知らないことわからないことがあると、多少ではあ
るが勉強するようになった。
 今の私の勉強のテーマは『歴史と宗教』。これは、亡父
から「物を書く人間は歴史と宗教を知らなければならな 
い」と言い渡されたせいもあるが、最近になって、まった
くその通りだと腑に落ちている。
 歴史の方はとりあえず昭和史から始めた。それ以上広げ
るつもりはない。なにしろ、膨大である。
 宗教については、通った大学がキリスト教系だったのと、
アメリカの歴史経済政治一般が必須だったので、キリスト
教についてはざっくりであるが理解している。イスラム教
については、9.11の事件以来、取り組まねばと思い、『崩
壊する巨塔』が机のはじっこに積み上げてある。つまり、
挫折中。だって、イスラムの人の名前って馴染みがないし、
長いし、私、カタカナが苦手なんだもん。
 さて、仏教。ということで、先日、友人に連れられて、
さる寺で開かれた『おはなしのひろば』に行ってきた。お
はなし会の前に、彼岸の法要もあり、檀家の方々手作りの
お非時もいただいた。私も、このようなお寺の檀家だった
らどんなにいいかと思い、随分と羨ましかった。
 『おはなしのひろば』では、本堂に入りきれないほどの
人が集まり、(入口近くにいた私は、残念そうに帰ってゆ
く親子連れの姿を見た。席を譲ってあげたかったが、私も
聞きたかったので替わってあげられなかった)仏教童話が、
趣向たっぷりに語られた。ご住職もお釈迦さま役でなかな
かの役者っぷりである。続くコンサートでは、経歴から推
し量る限り、かなり本格的な勉強をされた方が、「気楽に
してくださいね。お子さんが飽きたら、外に出てもらって
構いませんからね」というイントロで演奏を始めた。驚い
た。バロックヴァイオリンの音色が素晴らしかったのであ
る。音楽は不得意分野だが、できるだけ質の高いものを聴
くように心がけてはいるので、良いものはそれとわかるく
らいの耳はある。そして、その腕で、『川の流れのよう 
に』が演奏されたのにも驚いたが、その音楽に合わせて、
人々が歌い、目の前にいた兄弟が「へんてこ踊り」を嬉々
として踊り始めた頃には…、驚きを通りすぎ、ただ、微笑
んでいた。あえて考察するとすれば、「そっか。何でも有
りなんだ」という悟りを開いたとさえ言える。
 実は、『嘆異抄』をまだ読んだことがない。「遊びせむ
とや生まれけり、戯れせんとや生まれけり」という一節を
知るのみである。
 ゆっくりなじんでいきたいと思った。私たちのバックボ
ーンに。ちなみに、このお寺は西尾市にある。また、お邪
魔しますね、ご住職♪