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3月

2010

『テレビ塔に学んだこと』

 灯台もと暗し、とはよく言ったもので…。栄の喫煙スペ
ース、大切なところを取りこぼしていた。テレビ塔の足元、
オープンカフェスペースの隅っこ二ヶ所に、灰皿がある。
ゴミ箱と並んでいる。そりゃ吸殻はゴミかもしれないが、
喫煙者である自分までゴミになった気がするのは被害妄想
というやつだろうか。

 過日、テレビ塔に『マダムランチ』をしにいった。若い
ときからの先輩と、久々の邂逅である。数年間のあれこれ
を報告し合っているうちに、昔話になった。
「覚えてる? 弥生ちゃんはこう言ったのよ。『私、いろ
んなこと、知りたくありませんから』。ほんとに開いた口
がふさがらなかった」
「いやあ。しかし、先輩も、よくあんな生意気なの、面倒
見てくれましたよねえ」
「そりゃ、私も若いときは生意気だったから」
「はっはっは」
 ところで、テレビ塔が4階までは無料で上がれることを
知らない人は多いのではないだろうか。そして、4階から
見るなんちゃってセントラルパークの直線と緑が、思いの
外、やさしく美しいことを。
 テレビ塔のレストランは、価格もサービスも味も、ホテ
ルランチに全くひけをとらない。むしろ、コスパ(コスト
パフォーマンスの略)は高いのではないだろうか。
 そして、同じ4階にあるパークギャラリーが、とても頑
張っていることも、存外に知られていない。ここは、貸し
ギャラリーではあるが、常設展示として、名古屋の若手ク
リエータたちや意欲的な業者が創った作品かつ商品を置い
ている。テレビ塔オリジナルグッズにいたっては、お菓子
に始まり、編みぐるみ、彫金、絵はがき、ミニタオル、栞
と多彩である。
 テレビ塔を象ったキーホルダーを見て、目利きである先
輩が言った。「これ、今度、東京に行くときのおみやげに
しよう! エッフェル塔じゃないのよ、名古屋のテレビ塔
なんだよ! って」
 パークギャラリーのおかげで、テレビ塔を見直した。そ
れが、クリエーターの、アーティストの役割なのかもしれ
ないとさえ思った。視点を変える、ずらすこと。
 当たり前のように昔からそこにあり、ぞんざいに扱って
きたテレビ塔。でも、もし、テレビ塔があの場所から消え
るようなことがあれば、私は、喪失感を抱えてしまうだろ
う。そして、もし、名古屋城がなくなれば…。
 けれど、お城の修復に血税を使うのはいただけない。あ
る友人が言った。「自分の医療費くらい自分で稼げ! 名
古屋城」。最近の名言である。なにしろ私は喫煙者、人よ
り余計に税金を払う身であるから。